翻訳コラム
2020.04.16
台湾繁体字vs中国大陸の簡体字:翻訳の違いとは?
台湾と中国大陸の中国語の違いと言えば、まず目につくのは使っている漢字が違うことですね。台湾は日本の旧漢字と同じ「繁体字」、中国大陸の方はかなり簡略化された「簡体字」を使っています。
しかし、翻訳をする場合には、両者の違いは決して漢字だけではないのです。まず簡体字翻訳をして、それを変換ツールで繁体字に直せばいいだろう、と言うような簡単な話ではありません。以下、それは何故なのかを詳しく見てみましょう。
Index
中国大陸と台湾の標準語――「普通話」と「国語」
台湾では台湾語などの方言もありますが、公用語は「国語」です。一方大陸の標準語は「普通話」と呼ばれています。この2つは非常に似ているので、大陸の人と台湾の人は問題なく会話ができます。英語と言えば、イギリス人とアメリカ人が、多少の違いはあってもコミュニケーションできるのと同じです。
この二つの標準語が何故似ているかと言えば、どちらも清朝の時代に官吏の間で使われていた「北京官話」(英語では「マンダリン」)をベースとしているからです。中華民国時代に「国語」と言う名称で標準語として普及してゆき、さらに大陸では中華人民共和国となってから「普通話」となりました。
しかし、第二次世界大戦後、中国大陸と台湾でほとんど交流のない期間が長く続き、台湾住民の大陸訪問が解禁されたのは1987年のことでした。この約40年の間に、さまざまな新しい物や社会事象が生まれましたが、それを表す言葉は、中国大陸と台湾でそれぞれ別の用語が使われるようになったのです。
また、大陸と台湾は異なる政治体制・社会的背景を持っています。大陸の中国語にはそのバックグラウンドからくる独特の言い回しがあります。そして一般的に、台湾の文書の方がより文語的です。また、大陸と台湾でニュアンスが異なる言葉もあります。
つまり、台湾繁体字と中国簡体字が大きく分ければ、①単語の違い、②文体・ニュアンスの違いとなります。
では、これらについてもう少し詳しく見てみましょう。
台湾繁体字と中国簡体字の単語・用語が異なる場合
最も注意すべきなのは単語の違いです。単語が違う分野は、主として戦前にはまだなかった分野です。代表的な分野としては、IT用語があります。いくつか例を見てみましょう。
日本語 | 中国簡体字 | 台湾繁体字 |
---|---|---|
情報 | 信息 | 資訊 |
ソフトウェア/ハードウェア | 软件/硬件 | 軟體/硬體 |
ネットワーク | 网络 | 網路 |
プリンタ | 打印机 | 印表機 |
サーバー | 服务器 | 伺服器 |
さらに、知的財産権の分野についてもいくつか例を挙げてみましょう。
日本語 | 中国簡体字 | 台湾繁体字 |
---|---|---|
知的財産権 | 知识产权 | 智慧財產權 |
特許請求の範囲(特許法) | 权利要求 | 申請專利範圍 |
拒絶査定(特許法) | 驳回申请的决定 | 不予專利之審定 |
著作者(著作権法) | 作者 | 著作人 |
著作物(著作権法) | 作品 | 著作 |
複製(著作権法) | 复制 | 重製 |
上記の単語を見て、「違うといっても似ているから大体わかるでしょ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、文脈等で何となく意味は分かるという場合もあります。しかし、たとえば知財に関する契約書を考えてみると、「大体わかる」と言うレベルでは誤解が生ずる可能性があります。損害賠償等のリスクがある文書の場合は、やはり大陸・台湾それぞれで正確な用語を用いて翻訳をしたほうがよいと考えられます。
また、大陸と台湾で「同じ言葉なのに意味がまったく異なる」ものもあります。これもいくつか例を挙げておきましょう。
中国語単語 | 中国での意味 | 台湾での意味 |
---|---|---|
土豆 | ジャガイモ | 落花生 |
高考 | 「普通高等学校招生全国統一考試」(全国統一大学入学試験)の略称 | 「公務人員高等考試」の略称 |
高工 | 「高級工程師」(シニアエンジニア)の略称 | 「高級工業職業学校」の略称 |
上記に挙げたのはほんの一例です。この単語の違いはなかなか侮れません。
さらに、「ほんの少しの違い」でも注意すべき例をもう一つ挙げましょう。日本では法律で、第一条、第二条という風に条文が記述されますが、ある条の中をさらに分ける場合は「項」、項の中でさらに箇条書きにする場合は「号」を使います。たとえば「著作権法10条1項2号」と言うふうに言います。この「条→項→号」という順序は、台湾では「條→項→款」となります。つまり条と項は日本語と同じですが、「号」は「款」という言葉に変わるわけです。ところが、中国大陸でこれはどうなるかと言うと、「条→款→項」の順序となり、何と「項」と「号」を示す言葉が完全に台湾とは逆になっているのです。法律の条文を引用する際に条文番号はとても重要なので、些細な違いといえども翻訳の際に注意が必要な一例です。
台湾繁体字と中国簡体字の文体・ニュアンスの違い
上記に述べたように、歴史的・社会的背景により、中国簡体字と台湾繁体字には単語・用語以外でも違いが生じています。
台湾では公文書用語や手紙の用語に伝統的な言葉がかなり使われますが、大陸ではそれらは使われなくなっています。総じて台湾の公文書などは、大陸よりはるかに文語的な言い回しが多いといえます。非常に簡単な一例を挙げれば、大陸の法律では日本語の「の」に当たる「的」という言葉も使われますが、台湾の法律ではすべて「之」が使われています(例:上記知財用語の表中の「拒絶査定」)。
そして更に微妙なのはニュアンスの問題です。台湾のネイティブの人によると、大陸の文章を読んでいると「理解はできるのだけどちょっと違和感がある」という場合があるそうで、大陸では普通でも、台湾ではあまりイメージが良くない言葉もある、とのことでした。
ただしこのニュアンスと言うのは微妙なもので、通訳の場合には、一般的にあまり問題は生じません。なぜなら相手が目の前にいるので、表情や口調でもニュアンスは変わるものですし、疑問がある場合は直接確認できるからです。
けれど翻訳はそうはいきません。書かれた文字だけで勝負することになるので、たとえば契約書、クレーム対応のレターなどの場合には、解釈に齟齬が生じないように、また不快感を引き起こすような表現が使われていないかどうか、細心の注意が必要と考えられます。
けれど翻訳はそうはいきません。書かれた文字だけで勝負することになるので、たとえば契約書、クレーム対応のレターなどの場合には、解釈に齟齬が生じないように、また不快感を引き起こすような表現が使われていないかどうか、細心の注意が必要と考えられます。
絶対二種類(台湾繁体字と中国簡体字)の翻訳が必要?
上記で、台湾繁体字と中国簡体字翻訳が、漢字の問題だけではない違いが存在するということをご紹介しました。したがって、特に契約書などについては、台湾向けの場合は台湾のネイティブによる翻訳を行うことをお勧めしたいと思います。
けれど、色々と予算などの制約があるし…という場合もあるでしょう。そこでたとえばホームページの翻訳などの場合、日本語からまず台湾繁体字に翻訳し、そのあとに中国簡体字に変換して、中国大陸のネイティブによりチェックを行い、簡体字翻訳を完成するという手法を用いることもあります。
ただし、先に中国簡体字翻訳を完成してから台湾繁体字に変換し、台湾ネイティブによってそれを校正する、という方法はお勧めできません。上記のように中国大陸は大陸で特殊な言い回しも多いので、それを台湾の「国語」として違和感のない文章とするのは極めて難しいと思われるからです。
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