翻訳コラム
2018.10.24
ローカライズとは?翻訳との違いとその重要性を翻訳会社が解説
海外旅行をしたことがある方なら、誰でも一度は外国の習慣や文化、宗教、法律などの違いに戸惑った経験があるのではないでしょうか。例えば、日本ではおもてなしの文化を大切にしていて、レストランやショッピングの際には気持ちの良い接客を受けることが一般的ですが、海外のさまざまな国では必ずしもそうとは限りません。また、日本では小学生が子どもだけで歩いて登下校することは当たり前の光景ですが、日本を旅行中の外国人のなかにはそのことに驚く方も多いようです。
このように、文化や習慣、価値観というのは、国や地域によって大きく異なります。翻訳をする際には、こうしたさまざまな違いを考慮して、その国や地域に合わせた「現地化」を行わなくてはいけません。これが「ローカライズ」です。というわけで今回は、日本語を外国語に翻訳する際に気をつけるべき「ローカライズ」について詳しく解説していきます。
Index
ローカライズ(ローカリゼーション)とは?
ローカライズ(ローカリゼーション)というのは日本語で「地域化」という意味で、ある国を対象に作られた製品などを他の国でも使用できるように、使用する国の言語に対応させる事です。
もともとはIT業界で主に使われていた言葉で、ソフトウェアの表示を翻訳することを指していましたが、現在では翻訳業界でもローカライズを行うことが一般的になっています。例えば、日本で上映されている洋画で慣用句が使われていた場合、それをそのまま日本語に直訳しても意味が通じないことが多いため、英語の慣用句を似たような意味の日本語の慣用句に置き換えて字幕を作成するローカライズが行われるわけです。もう一つの例としては、日本のアニメが海外に輸出された場合、輸出先の言語に翻訳されるだけでなく、その国の文化や習慣に応じて細かな設定やシーンを変更する場合があります。これもまたローカライズだと言えるでしょう。もともとの世界観を大切にしながら必要に応じて変更・修正を加えることで、その国に受け入れられやすくなるというわけです。
ローカライズの重要性
ある言語を外国の言葉に変換する場合、ローカライズを意識する事が大切だといわれています。なぜなら、ローカライズを意識せずに変換した文章というのは、そのまま直訳したのと同じになってしまうため、文化や習慣、法律、宗教が異なる国の人にとっては、意味のわからない文章になってしまう場合があるからです。
例えば、英語の「I could eat a horse!」という比喩表現。これは直訳すると「馬だって食べられる」になりますが、実際には「お腹がペコペコだ」という状態を意味しています。欧米人にとって馬は大切な友だちのように身近な存在で、馬を食べるということは考えられないこと。その馬を食べることができそうなくらいひどい空腹だという意味を表しているわけですが、馬肉を食べる日本人に対して、ローカライズを意識せずに直訳された「馬だって食べられる!」という文章を用いても、本来の意味を伝えることはできないのです。
そして、アメリカ英語とイギリス英語の違いは、翻訳ではなくローカライズの良い例です。両者は同じ英語であるため、翻訳は不要ですが、ローカライズは必要です。例えば、アメリカでは「エレベーター」を「elevator」と呼びますが、イギリスでは「lift」となります。また、アメリカで「バス」と呼ばれる「bus」が、イギリスでは「bus」も同じですが、アメリカでは「トラック」というと「truck」、イギリスでは「lorry」という単語が使われます。このように、言語の変換においてローカライズを意識することで、文化や地域に適した表現が可能となります。
また、中国語の場合ですが、中国語で使われる文字には「繁体字」、「簡体字」の2つがあり、それぞれどこで多く使われているかが異なります。そのため、それぞれの違いについてもきちんと理解したうえで翻訳を行わないと、本来の意味が伝わらないばかりか、理解すらできなくなってしまうこともあるのです。
ローカライズと翻訳、コピーライティングの違い
ローカライズと翻訳はたびたび同じ意味として使われることがありますが、厳密には翻訳というのは「言語だけを変更する」作業の事で、基本的には一字一句忠実に訳すのが一般的です。一方、ローカライズというのはその言葉が使われている国の文化や習慣、流行、法律、宗教といったさまざまな背景を考慮した上で、その国に合わせた作業を行うことを意味しています。例えば通貨の単位を相手国の通貨に変更したり、日時などをその国の表記方法に合わせたりするのがローカライズです。
これに対し、商品やサービスを宣伝するための広告文章を異なる文化や習慣などの背景に合わせて作り直すことをコピーライティング(トランスクリエーション)と言います。ローカライズや翻訳に加えて、ブランディングやターゲティングを意識する必要があるため、より高いスキルが求められるのが特徴です。
ローカライズをする際に注意したい点
では、実際にローカライズを行う場合、どのような点に気をつけたら良いのでしょうか。最も大切な事は、翻訳対象となる国の事を詳しく理解するということ。その国の文化や習慣だけでなく、法律、時事ネタ、トレンドなどを細かく把握しておくことで、より自然で受け入れられやすい文章に仕上げることができるはずです。
ただ、その国の文化や習慣・トレンドをすべて把握したうえで翻訳を行うのは難しい場合がほとんどです。そのため難しいと感じた場合には、翻訳会社へ依頼をすることも検討してみてはいかがでしょうか。
ローカライズの対象
ローカライズが必要な対象は多岐にわたり、主に以下が挙げられます。
Web サイト
企業のコーポレートサイトやグローバルサイトでは、重要なメッセージが現地のユーザーに伝わるようにローカライズが必要です。
アプリケーション
モバイルアプリなど、日常生活に密接に関わるアプリケーションでは、ユーザーに違和感を与えない自然な翻訳が求められます。
製品ドキュメント
マニュアルなどの製品ドキュメントは、誤訳がトラブルを招くことがあるため、注意深い翻訳が必要です。
商品 / サービス
ECサイトやSaaSのUIやコンテンツでは、わかりやすいローカライズが求められます。特に、購買に近い部分の翻訳は重要です。
ローカライズの事例
実際にサービスや企業で見られるローカライズの事例を紹介します。
ビジネスでのローカライズ事例①
ローカライズは、文字だけでなく、ロゴやWebサイトのカラーも変更します。例えば、メルカリのロゴは日本では赤ですが、アメリカでは信頼性を感じさせる紫が使われています。このように、各国で好まれる色に合わせることもローカライズの一環です。
ビジネスでのローカライズ事例②
世界100カ国以上で展開するマクドナルドですが、国の文化や習慣によってメニューが大きく異なる場合があります。例えば、牛を神聖視するインドでは、牛肉ではなく鶏肉を使った「マハラジャ・マック」を販売したり、ベジタリアン向けの健康食が好まれる北欧では、肉を使わないヴィーガンバーガーを提供しています。日本の「お月見バーガー」のように、特定の国の風習を反映したメニューもあります。現地の風習や嗜好、宗教などを考慮して製品に変更を加えていくのがローカライズです。
ローカライズを意識した翻訳は翻訳会社FUKUDAIにお任せください
翻訳会社FUKUDAIでは、これまで多くのローカライズ翻訳を手掛けてきました。マニュアル、UI、Webサイトなど、様々なニーズに応じた最適なローカライズをご提案いたします。
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監修者
翻訳会社FUKUDAI 代表取締役
鈴木 宏基