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2021.05.18

SDS(安全データシート)翻訳とは?知っておきたい基礎知識

SDS(安全データシート)は、化学製品を流通させる際に化学物質リスクの情報提供として必ず添付することが義務付けられています。SDSは世界各国で普及している化学製品から人や環境を保護するために必要不可欠な文書です。

本記事ではSDSとはどのような文書なのかと、翻訳するための要件について解説します。

SDS(安全データシート)とは?

SDSとはSafety Data Sheet(MSDS、安全データシート)の頭文字をとった略称であり、特定の化学物質に添付されている文書を指します。
SDSの内容は後述のGHSという国際基準に基づき必要な情報(化学物質の性状、危険性や毒性、安全対策など)を記載する書式になっており、化学物質の「取扱説明書」の役割をもつ資料です。
事業者が特定の化学物質やそれらを含む製品を提供する場合、化学物質の安全な使用と取扱いのために出荷時には必ずSDSを添付することが義務とされています。

また、MSDSはSDSの旧名称です。日本では、2012年(平成23年度)までSDSに相当する添付文書は「MSDS(Material Safety Data Sheet : 化学物質等安全データシート)」と呼ばれていましたが、後に国際整合のためにGHSで定義されている「SDS」に名称が変更されました。

JIS規格とGHS国連文書との違い

日本における化学品の分類は日本工業規格JIS Z 7252に規定されています。この規格は、国連により2011年に発行された「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)改訂4版」に基づいて作成されました。このGHS分類及び表示法の各国システムへの取り入れ方はそれぞれの国の裁量に任されており、日本の化学物質分類は国連のシステムとは数か所で異なっています。

日本の化学品の分類の基盤になっている国連GHSは、国際的に整合性をもって化学物質の危険有害性や取扱い上の注意事項等を伝えることを目的として、国連が提案したシステムです。

「GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)」とは、危険有害性の種類(「物理化学的危険性」、「健康有害性」、「環境有害性」で分類される)と程度(度合をあらわす「区分」で表示)を国際的に統一されたルールで分類し、安全データシートなどを提供する国際基準システムのことです。
GHSでは化学物質の危険有害性がひと目でわかりやすいシンボルマークが決められています。たとえば、「炎」のマークは「可燃性・引火性ガス」をあらわし、「どくろ」のマークは「急性毒性」をあらわします。日本を含め世界各国で、化学製品の分類や表示についてGHSが導入されています。

SDSが必要とされる状況

日本では化学物質に係る法律は非常に多岐にわたるため、扱う化学品それぞれに対してすべての法律を網羅的に調べるのは非現実的、非効率的です。そこで活用されるのがSDS(安全データシート)です。
次のような状況でSDSの提供が求められます。

  • 税関検査 (有害化学物質のリストに掲載されている製品、またはGHS基準により危険であると分類されている場合)
  • 貨物輸送申告(製品の輸送規定に該当する場合)
  • 製品が製造工程で化学製品(漂白剤、染料など)が使用されている場合
  • 規制により危険物または危険物を含む混合物として分類された物質の場合
  • 危険物として分類されていないが、懸念のある物質「SVHC(Substances of Very High Concern:高懸念物質)」またはその他の危険な成分が一定の割合で含まれている場合
  • 基準により難分解性、生体蓄積性、毒性が高いと判断された物質が含まれる場合
  • 所管官庁または輸入業者がより厳密な安全管理のためにSDSの提供を要求した場合
  • 地域の規制により顧客がSDSの提供を要求した場合

また、化学実験を安全に行うための試薬の取扱注意事項として、取扱う事前に必要な情報を法規に則したデータベースから抜粋してSDSのリストを作成し、熟読しておくように推奨されています。

SDS対象化学物質

SDS制度の対象として定義されている化学物質は、下記のとおり「第一種指定化学物質」および「第二種指定化学物質」あわせて562物質です。
人や生態系に対して有害とされるものが対象となっており、第一種には、環境中に広く存在するものが、第二種にはそれほど量は多くないが継続的な管理が必要とされるものが指定されています。

物質の種類 物質の数 物質の例
第一種指定化学物質
(Class 1 Designated Chemical Substances)
462物質 アクリルアミド(acrylamide)
エタンチオ―ル(ethanethiol)
ジクロロベンゼン(dichlorobenzene)
第二種指定化学物質
(Class 2 Designated Chemical Substances)
100物質 ウレタン(urethane)
クロロアセトアルデヒド(chloroacetaldehyde)
ジニトロナフタレン(dinitronaphthalene)
合計 562物質

(出典:経済産業省 化管法SDS制度 対象化学物質

SDSに記載する内容

SDSには以下の16項目を記載します。
記載内容は一例であり、対象製品、対象物質により異なります。

項目名 記載内容
1)化学名及び会社情報 化学品の名称、供給者の会社名称、住所・電話番号
2)危険有害性の要約 化学品のGHS分類、GHSラベル要素、注意書き
3)組成及び成分情報 ・化学名又は一般名及び濃度又は濃度範囲など
・化学物質か混合物かの区別
・化学物質の名称
・CAS番号*
・含有量(%)
4)応急措置 病院を受診する、皮膚に付着した場合は水で洗浄するなどの対応方法
5)火災時の措置 適切な消火剤、危険有害性、消火を行う場合の注意点
6)漏出時の措置 人体、環境に対する注意事項
7)取扱い及び保管上の注意 取扱い技術的対策、接触回避など
8)ばく露防止及び保護措置 管理濃度、設備対策、保護具の使用など
9)物理的および化学的性質 物理状態、色、臭いなど基本的な物理的および化学的性質に関する情報
10)安定性及び反応性 反応性、化学的安定性など
11)有害性情報 毒性、腐食性、刺激性など毒性学的影響に関する情報
12)環境影響情報 水生環境有毒性、水溶解度、残留性など環境に関する情報
13)廃棄上の注意 規制に従って廃棄するなど
13)廃棄上の注意 規制に従って廃棄するなど
14)輸送上の注意 国連番号、正式輸送名など
15)適用法令 該当する場合は法令と物質名を記載
16)その他の情報 訓練の必要性、推奨される取扱い、制約を受ける事項、参考文献など

*CAS番号:CAS登録番号(CAS registry number)
化学物質を特定するためにアメリカ化学会の組織であるCAS (Chemical Abstracts Service)が登録を行う化学物質固有の識別番号。必ず一つの物質には一つの番号が付与されており、世界共通で利用されている。

SDS(安全データシート)翻訳の重要ポイント

SDS(安全データシート)を翻訳するには

SDS(安全データシート)の翻訳には、特定の専門知識と注意が必要です。以下では、SDS翻訳における主なポイントをご紹介します。

SDSの翻訳にかかる時間と課題

SDSは情報量が多いため、ページ数が多くないにもかかわらず翻訳には時間がかかります。提出期限が迫っている場合や、SDSの仕組みに不慣れな場合、調査だけで日数を要することがあります。

SDS翻訳に必要な専門知識

SDS翻訳は、対象国の言語知識だけでなく、化学専門用語やGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)など、国際基準と対象国の法規制に精通していることが求められます。例えば、日本のSDSは化管法、安衛法、毒劇法などの法律に基づき記載されており、アメリカへの輸出製品のSDSは、日本のものを単に英訳するのではなく、アメリカの法規制に基づいて新規に作成する必要があります。

化学物質名のIUPAC名称の重要性

化学物質名は、IUPAC(国際純正および応用化学連合)名称で表されることが一般的です。これにより、化学知識がないと単なる英数字の羅列に見えることもありますが、正確な理解が必要です。

例えば:

日本語表記:3-(3,5-ジクロロフェニル)-N-イソプロピル-2,4-ジオキソイミダゾリジン-1-カルボキサミド
別名:イプロジオン

英語表記:3-(3,5-dichlorophenyl)-N-isopropyl-2,4-dioxoimidazolidine-1-carboxamide; iprodione

このような表記は化学知識がないと英数字の羅列にしか見えず、英語が得意でも読むことが苦痛に感じる人もいるでしょう。一般英語翻訳とは別のスキルが求められます。

*IUPAC:化学者の国際学術機関「IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)国際純正および応用化学連合」
構造が明確な化合物に対して、わかりやすく簡単で、かつ一義的に特定の構造を表すような名称法を定めている。

SDS翻訳を行うには、単なる言語の翻訳能力を超えた専門性が必要であり、化学知識とともに国際基準や対象国の法規制を熟知することが不可欠です。

SDS(安全データシート)翻訳の料金相場

SDS(安全データシート)翻訳の料金相場

科学・工業技術野の一般的な日英翻訳サービスにおいて日本語1文字あたりの料金の目安は28円とされています。(参照:日本翻訳連盟 翻訳料金の目安

実際の翻訳料金は翻訳会社により幅広く設定されています。
SDSの翻訳については下記の2とおりで翻訳サービスを提供する翻訳会社が多くなっており、それぞれ料金は異なります。

1)原稿の内容をそのまま忠実に翻訳を行う
2)GHS基準に対応し、対象国の法規制に準じて翻訳を行う

弊社FUKUDAIは、一般的な目安料金と比較しても、リーズナブルな料金で翻訳を承っております。翻訳クオリティも上記でご紹介したように高品質かつ迅速で、多くのお客様から高評価をいただいております。

英日翻訳:英文→和訳(原文の英語 1 ワードあたりの税別単価)

文書の種類/分野 日本翻訳連盟の目安料金 翻訳会社FUKUDAI
コンピューターマニュアル 28円 16円
一般科学・工業技術 28円 16円
金融 30円 16円
経営管理・財務・契約書 30円 16円
医学・医療・薬学 35円 20円
特許明細書 26円 18円

日英翻訳:和文→英訳(和文原稿の1文字あたりの税別単価)

文書の種類/分野 日本翻訳連盟の目安料金 翻訳会社FUKUDAI
コンピューターマニュアル 20円 14円
一般科学・工業技術 21円 14円
金融 25円 14円
経営管理・財務・契約書 25円 14円
医学・医療・薬学 30円 20円
特許明細書 30円 18円

引用元:日本翻訳連盟公式サイト

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FUKUDAIのSDS(安全データシート)翻訳サービスでは、化学分野に精通した技術者や元専門職出身の翻訳者が多数在籍しています。高い専門性を持つ翻訳者が担当するため、安心してご利用いただける翻訳を提供しております。また、急ぎのご依頼や納期に関するご相談も随時承っております。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修者

翻訳会社FUKUDAI 代表取締役

鈴木 宏基

株式会社トーメンや株式会社ロームにて、10年以上にわたり海外営業に従事。その後、翻訳者としての経験を積み、株式会社福大を創業。翻訳事業を立ち上げ、代表取締役に就任。

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