翻訳コラム
2020.09.04
字幕翻訳には音声翻訳の技術発展が影響する?翻訳会社が徹底解説
外国のニュースやドラマなどを観るときに欠かせない字幕。字幕翻訳に求められるのは、映像を観ている人が即時に理解できるような、タイミングに合ったわかりやすい翻訳です。そのため字幕翻訳をする際には、特別なルールや技術が欠かせません。
本記事では、字幕翻訳のルールや手法、また音声翻訳の発展が字幕翻訳に与える影響などについて詳しく解説します。
Index
字幕翻訳は映像翻訳の手法のひとつ
外国語の映画やインターネット配信の動画などを楽しむのに映像翻訳は欠かせないものです。映像翻訳は字幕翻訳、吹替翻訳、ボイスオーバーの3つに分類されますが、ここでは、そのうちの字幕翻訳のルールについて詳しく説明します。
字幕翻訳の2つのルール
字幕は、映像を観ている人が一瞬で読めて理解できる翻訳でなければいけません。たとえば映画を観ているときに、目で追えないほどの文字数であったり映像と字幕がずれていたりすると、映画そのものを楽しむことはできないでしょう。
そのため字幕翻訳には、次のようなルールがあります。
・1秒に4文字
・1画面に2行かつ20文字まで
この2つのルールに沿って字幕翻訳をしますが、はじめにすべてのセリフやナレーションを翻訳する必要があります。この翻訳には「ハコ書き」と「スポッティング」という作業が欠かせません。
字幕翻訳に欠かせないハコ書き
ハコ書きとは、映像を見ながらスクリプト(台本)にあるセリフやナレーションを字幕ごとに区切る作業のことを指します。たとえば次のように、区切るところの前にスラッシュ入れ、先頭に番号を振っていくやり方が一般的です。
Mia: 1/ Hi,Jacob.
Jacob: 2/ Mia! After a long time. 3/ I was looking forward to coming back. How long do you have a vacation? 4/ Do you have that?
ハコのなかには、1人の話し手のセリフしか入りません。もし、2人のセリフが重なるときは重要なほうのセリフが優先されます。ほかのセリフはハコから除外されますが、このことを「アウトにする」といいます。字幕翻訳するときには文字数が限られるため、必要のないセリフや感嘆詞、誰にでもわかる名前などもアウトにすることが多いです。
また、ハコの長さにもある程度決まりがあります。通常、0.5〜7秒間の長さのハコで字幕を表示しますが、ドラマなら6秒以下、ドキュメンタリーなら7秒以下が目安です。0.5秒以下だと、あっという間に字幕が消えてしまうため実際に読むのは難しいでしょう。
ハコ書きの段階で、映像からわかる内容やすでに訳出した情報は削っていきます。またマニュアルなどに多い「この」や「その」などの指示語も削ることが多いでしょう。
字幕翻訳に欠かせないスポッティング
スポッティングとは、字幕を表示するタイミングと長さを決める作業のことです。基本的に、ハコ書きを行った翻訳者が、ストップウオッチや字幕作成ソフト、映像の編集機材などを使い作業します。ただし細かなフレーム処理については、高度なスポッティング技術が必要とされるため専門家が担当します。
字幕翻訳のルールやコツについて詳しくはこちらをご覧ください。
字幕翻訳とは?コツやメリットを翻訳プロが徹底解説!
さまざまな動画ファイルへの対応が必要
字幕翻訳に必要な動画ファイルにはさまざまな種類がありますが、編集可能なファイルと再生専用のファイルの2種類にわけられます。編集可能なファイルとして代表的なものには、AVI、MOV、WMVなどがあげられるでしょう。一方、再生専用のファイルとして現在よく使われているのはMP4形式です。
字幕翻訳に関しては、MP4形式の再生専用ファイルがよく利用されます。このファイルがあれば、単純に日本語字幕を表示するには問題ありません。
ただし動画内のテロップやパワーポイントの文字を訳語に差し替えたいときは、編集可能なファイルが必要です。もし編集可能なファイルが準備できない場合は、代替案として、もとの動画内のテロップや文章の下に訳語を併記するスタイルをとります。
グローバル展開する企業は、英語だけでなくフランス語やドイツ語、中国語などの多言語に対応しなければいけません。たとえば、英語の字幕があるフランス語の動画ファイルにおいて、その字幕を英語から日本語の字幕へ差し替えたいといった場合は、編集可能なファイルが必要です。しかし編集のできないMP4形式のファイルしかなければ字幕を差し替えることはできないため、英語の字幕に薄い灰色でマスクをつけ、その上に日本語字幕をかぶすといった方法で対応します。
字幕翻訳については、さまざまな動画ファイルへの対応が必須であるため、字幕翻訳に豊富な経験をもつ翻訳会社へ依頼することをおすすめします。
音声翻訳の技術発展が字幕翻訳を変える
昨今、音声翻訳の精度は飛躍的に向上しています。そのため、従来からの字幕翻訳のプロセスに音声翻訳を活用する場面が多くなっています。
従来の字幕翻訳とは
従来からの字幕翻訳は、次のようなステップで行われています。
①専門家による文字起こし
②テキストデータのレビュー
③テキストの翻訳
④専門家による翻訳のチェック
⑤文章の長さや表示時間の調整
このうちの最初のステップである文字起こしに、音声翻訳を活用する機会が多くなっています。
音声翻訳の技術発展とは
音声自動認識技術が発展したことにより、音声翻訳で文字起こしができるようなWEBサイトやツールが数多く開発されています。従来、専門家による文字起こしが必要でしたが、機械で行うことによりコスト削減と効率化が図れます。とはいえ、人の手による文字起こしのほうがより精度が高いのは事実であり、音声翻訳によって文字起こししたテキストがそのまま利用できるわけではありません。
2つの代表的な音声翻訳WEBサイト
ここでは、音声翻訳が簡単に行える音声自動認識WEBサイトを紹介しましょう。音声翻訳WEBサイトとして代表的なものが、YouTubeとWatsonです。
YouTube
動画サイトとして、世界的によく知られているのがYouTubeでしょう。利用者数も多いことから、自身も動画をアップしたことがあるという人もいるのではないでしょうか。YouTubeでは、アップした動画の文字起こしを自動で行える機能がついており、アカウントを作成した人であれば誰でも利用できます。
以前の音声翻訳はとても自然な翻訳とは言いがたいものでしたが、現在ではその精度はかなり高く、文字起こしにかかる時間も比較的短くなっています。
さらに優秀なところは、自動で文字起こしが行えるだけでなく字幕ファイルまで作成できる点でしょう。音声のタイミングとテキストの内容が記載されたファイルを作成してくれるため、テキストの表示時間を調整する手間を省くことができます。
ただし、かなり正確な音声でなければ認識されません。たとえば英語の場合、イギリス人とインド人の英語のアクセントは非常に異なります。アクセントが強い場合は正しく認識されないため、文字起こしも行うことができないのです。また、文章の切れ目を自動で認識しないため、文頭であっても大文字に変換されないといった欠点が残ります。
詳しいことは、以下のサイトで確認できます。
(出典:YouTubeヘルプ「自動字幕起こし機能を使用する」)
Watson
Watsonは、IBMが提供している音声翻訳です。YouTubeと同じように、音声自動認識技術を利用して自動で文字起こしを行ってくれます。
YouTubeと大きく異なる点は、認識される音声の範囲が広いことでしょう。かなり強いアクセントがある場合でも文字起こしが可能です。また文章の切れ目をきちんと認識するため、文頭が大文字に変換されます。
しかし、認識される音声の範囲が広い分、YouTubeより翻訳の精度が落ちる傾向にあります。つまり、通常であれば、正しく認識されない音声までもやや強引に翻訳するため、意味の通じないテキストに仕上がるのです。また字幕ファイルの作成はできないため、文字起こしのあとは、音声のタイミングとテキストの内容を自身で合わせる必要があります。
こちらについても、以下のサイトで詳しく説明されていますので、利用する場合は参考にしてください。
(出典:IBM「Watson Language Translator」)
字幕翻訳の精度を上げる音声翻訳後の処理
上述したように、音声翻訳の技術が発展したことにより、字幕翻訳の工数をかなり減らすことができるようになりました。それでも正確な字幕翻訳には、人の手による修正は必要不可欠です。
翻訳間違いを修正する
音声翻訳の精度の限界や、もともとの音声の不備から翻訳間違いが起こります。このような間違いをなくすため、人が音声を聞き正しく翻訳し直す必要があるでしょう。また音声翻訳では、字幕翻訳には不要な単語まで全て翻訳されるので、必要のない単語を削る必要があります。
数字をアラビア数字に統一する
字幕翻訳では、数字はアラビア数字が一般的です。しかし名詞としての”one”もあるため、人が音声を聞き、数字なのか名詞なのかを判断します。
カンマを挿入する
翻訳のなかでカンマの位置は非常に重要です。カンマの位置により文章の意味が違ってくるということはよく起こる現象で、文脈にあったカンマを挿入する必要があります。音声翻訳では文脈が考慮されているわけではないため、人の手で正しい位置にカンマを挿入しなければいけません。
字幕翻訳であれば豊富な実績を誇る翻訳会社FUKUDAIへご相談ください。
音声翻訳の技術の発展により、字幕翻訳の現場でも音声翻訳を活用することが多くなっています。しかしながら、人の手による修正は必須であり、高品質な字幕翻訳を望む場合は翻訳会社に依頼するほうが良いでしょう。
翻訳会社FUKUDAIでは、ドラマやドキュメンタリー、WEB配信用の動画、幅広い分野の企業研修用動画など、さまざまな動画の字幕翻訳に対応しています。字幕翻訳には特殊な技術を必要とするため、専門性の高い翻訳者による翻訳やチェックが欠かせません。翻訳会社FUKUDAIでは、経験豊富で優秀な翻訳者やチェッカーが揃っており、安心して字幕翻訳を依頼することができおすすめです。
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